研究の関係で義肢装具関連の研究機関を訪問する必要がありました。
Webで調べて首都圏の中3つほどに絞り、3週間ほどかけて全部訪問してきました。ちょうたのしかった!
今回は一つ目の国リハ見学レポです。
国リハはWebに見学申し込みフォームがあるのでコンタクトがしやすかったです。
見学は平日10:00~と13:30~の2回がありますが寝坊が怖いので迷わず午後の回を選択。今回はオプションとして義肢装具技術研究部を選択しました。(じゃないとただの施設見学には義肢装具部門見学が含まれないので意味ねえ)
・ロケーション
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施設は西武線新所沢or航空公園駅から徒歩10-15分といったところですが、まず敷地めっちゃ広くてビビる。国リハはその名の通り障害者のリハビリ支援を大きな目的とした国立機関で、病院、自立支援局、研究所、専門職(理学療法士とか)養成学校が一つの敷地に揃ているのでそりゃデカイわけです。
受付を済ませ、近くの資料室で待機。この資料室から既に色々展示してあってホクホク。

キーボード入力用ヘルメット!
是非試用したい!


カトラリー充実しすぎ。なぜかカトラリーだけプロダクトとしての完成度が高いです。食器業界が頑張ったのかな?
・施設見学
今回の施設見学はリハビリ施設の見学がメインでした。以下説明の内容箇条書き。
- 病棟は障害種別ごとに区画分けされている。 目が見えない人と足が無い人では必要な生活設備が全然違うので。区画ごとに障害種別に合ったトイレ、風呂とかを装備している。
- 障害者用シャワーの一つが洗車機みたいで面白かった。身体を挟むようにして並んだ複数のノズルがシャワつてくる。多分上肢が不自由な人用。家に欲しい。
- 障害者の職業訓練施設を幾つか見学。クリーニング業務、裁縫、按摩、はんだ付け、CAD-NC加工機など。
- リハビリ施設を見学。漫画「リアル」で見るような施設の中に、車椅子から自動車に乗る訓練のための実寸自動車モデル(車ごと高さ調節可)があったり、床面と同じ高さに埋め込んである巨大トレッドミルとかあってえらい新鮮な光景である。このトレッドミルは段差がないから車椅子でも使えるんですね。
- 節電がずいぶんと徹底していてびっくりした。所によっては蛍光灯が外されすぎていて結構暗かった(盲人用エリアかも?)。
我が国では障害者雇用促進法において各企業に障害者雇用率1.8%が義務付けられています(一部業種を除く)。障害者と一口で言っても医学、法律、リハビリテーション的観点それぞれから見た分類があり、また就業可能性においても障害の深度から一概に言えるものではありません。技能・実務経験が重要視される特定の技術職においては障害があることがハンデになりにくいため、こういった施設で職業訓練がされているんだそうです。ところで日本の障害者雇用率の高い企業を見るとユニクロまじ飛び抜けてますね。結構長い期間そこに優先度高くおいてないと出てこない数字な気がします。
定形見学コースを終え、義肢装具研究部門の見学へ。
・義肢装具技術研究部見学
国リハは7つ(!)の研究部を抱えており、義肢装具技術研究部はそのひとつです。敷地内には研究棟が独立して存在していおりほとんどの研究部はその研究等の中にありますが、義肢装具研究部だけ別棟でした。
義肢装具研究棟の入口にいくつか展示物があって主に義肢がずらずらと並んでいます。

日本最古と思われる義足。1818年以前制作と見られる。
どんだけ昔やねん。
なんと写真を撮り忘れましたが筋電義手(ちゃんと動く)も展示してあって体験して来ました。前腕の腹側と背側の筋電で2ch取って義手の把持と開閉に対応させているようです。
国リハの義肢装具部は国リハ内の病院お抱えの義肢装具工場でもあるため、医師・義肢装具士・理学療法士全部がこの施設で用意できるわけですね。普通の病院だと装具士や療法士を外から呼んだりするケースも多いそうです。
義足の製作工程も見せていただきましたが、思ったよりずっと手工業でした。
義足の工程をざっくり説明すると、
- 患部の型を取る。このときたいてい使われるのは水硬性の医療用ギプスです。
- 型に石膏を流し込む。固まって取り出したものが患部のオス型ですね。
- オス型を整形する。実は患部の型をそのまま取っただけではあまり意味がありません。実際に装着したときの荷重のかかり具合を考慮しながら骨の当たる部分を削ったり、肉の当たる部分を盛ったりします。ここの出来で装着感が全然変わってしまうので慎重にやらないといけません。言うまでもありませんがこの工程はモロ腕の差が出てしまうところで、熟練の技術が問われます。
- FRP(繊維強化プラスチック)用の繊維をオス型に巻く。繊維もガラス繊維とか炭素繊維とかケプラー(防弾チョッキのアレな)とか色々あって用途に合わせて選択します。時には別のものを積層したりも。この辺のチョイスは会社や個人によって変わってくるそうです(変わるのかよ)。
- 繊維に樹脂を浸透させる。FRPなので当然樹脂を用いるわけですが、これもアクリル(柔らかい)やエポキシ(硬い)などの選択肢があり、しかもアクリルやエポキシと一口で言っても色々な性質のものがあるのでやっぱり用途に合わせて選択します。時には(略)。この辺のチョイスは(略)。
- 繊維に樹脂を浸透させる2。さっきのFRPはPVA(ポリビニルアルコール:水で溶けるビニール)というシートで挟んでいるのですが、一端から真空吸引して空気を抜くことで完璧に浸透させて固めます。
- 以上で出来た患部の型がソケットと呼ばれるもので、これにネジ穴をつけてパイプを繋いだり足パーツをつけたり(膝上切断の場合は膝関節のパーツもつけたり)して出来上がりです。(訪問の目的上、FRPの部分に興味があったのでそこを重点的に聞きました)
というわけでびっくりするほどハンドメイドなわけです。僕もここにおじゃまするまで義肢装具もオーダー靴みたいに3Dスキャナで患者をスキャンしてNC加工で装具を作ると思ってました。そもそもFRPがNC加工に全く向いてないんですね。
他にもいろいろなお話を伺ったのですが、個人的には筋電義手の話が一番面白かったです。
日本はどうやら筋電義手に関しては後進国で、進んでいるのは英国とかカナダとか米国だそうな。というのも現在の日本の健康保険では筋電義手まで対応できないため、金銭的に余裕のある人か他の保険(労災とか)がおりている人でないと普通は手に入らないのです。これはとりわけ子供の上肢欠損におおきな問題で、このへんに詳しく書かれています。
国リハは日本でも数少ない筋電義手を扱っている機関です。またあとで知ったのですが、労働災害によって手を失われた方を対象として、筋電電動義手の「研究用支給」制度があるそうです。軽く試した感想としては慣れれば非常に有用と思いますし、相性の良い方は後ろ手でエプロン結ぶとかできるらしいです。
参考:
筋電義手試用評価サービス http://www.rehab.go.jp/ri/hosougu/kinden.html
義肢装具の手引き http://www.rehab.go.jp/ri/hosougu/User.html
我が国が技術立国だったのは前世紀の話ですが、いっそナマの手より便利な義手とか作ったら非常に日本らしくていいなあと思います。そんじゃーね!
(書くのに時間かけすぎた・・・)
以下ギャラリー
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日本最古と思われる義足。1818年以前制作と見られる。
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スポーツ用義足。義足の短距離走が早くなりすぎて最近話題になりましたね。